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第27回京都府理学療法士学会(リハビリデイサービス木津川 藤原猛志)

デイサービスにおける脳卒中片麻痺利用者に対する理学療法の意義について~一症例の経験から~

key word』疼痛、坐位保持、意欲  リハビリデイサービス木津川 藤原猛志・中島文音

【はじめに】

現在デイサービスにおいて個別の理学療法が実施されることが少なくない。これは利用者の理学療法に対するニーズの存在の証であり、当施設ではそうしたニーズに応えるべく、リハビリ特化型デイサービスを展開している。今回発症から約1年半経過し意識障害、重度運動麻痺などにより在宅生活に著しい制約を生じた症例に対し、デイサービスでの理学療法とその意義について考察したので報告する。

【症例紹介】

61歳男性、平成2611月に右視床出血脳室穿破を発症し緊急脳室ドレナージ術を施行、その後2度のドレナージ入れ替えを施行。リハビリ目的で3度転院して平成282月に在宅復帰し現在一軒家で妻と2人暮らし。妻は就労しており平日の週5回当デイサービス利用となった。

【評価】

来所時はJCS-3Brunnstrom Stage(以下BRS)は左上肢Ⅱ、下肢Ⅲ、手指Ⅱで運動感覚、表在感覚共に鈍麻。MMSE 26/30点で身体失認を認めた。Fugl-Meyer Assessment 14点で左肩には亜脱臼による疼痛があり、Numerical Rating Scale(以下NRS5/10点、肩峰骨頭間距離(以下AHI3cmであった。FIM 47/126点であった。

【理学療法経過】

目標はご家族の介助軽減と定め主に坐位保持、移乗動作の獲得を目指し理学療法の開始となったが、不安定な意識レベルと亜脱臼による左肩の疼痛が阻害因子となった。左肩の疼痛には脳卒中ガイドライン2015に基づき低周波治療で電極を棘上筋、三角筋後部に設置し、100Hz25Aで週5回、1日30分施行し自動介助運動を実施した。これらによりNRS 3/10点、AHI 2.5cmとわずかな改善傾向を認めた。また意識や認知機能にはレクリエーションや集団体操への参加を同時進行した。移乗動作の前提ともなる坐位については骨盤後傾位で体幹の筋収縮が乏しく、右手で手摺を把持しても後方転倒傾向を認めた。坐位問題に対しては体幹筋の筋収縮を促し、体幹伸展位保持のため骨盤前傾位を主としてアライメントを整えた。

【現状】

現在はJCSBRS、左上肢感覚、MMSEとも著しい機能面での変化はないが、FIMでは47点から53点とセルフケア、移乗に関して改善を認めた。

【考察】

デイサービス開始から意識障害や運動麻痺といった機能障害について著しい変化は認められていない。しかし坐位姿勢については肩の疼痛などの2次的な障害の改善と体幹の残存機能に関して一定の変化を認め、ご家族の介護負担軽減と生活や通所へのモチベーション向上をもたらした。

今回、デイサービスという総合的なリハビリテーションに包含されるレクレーションへの参加なども改善の一因となったことは考えられるが、それ自身も健康状態や心身機能・構造といた視点からの分析に裏付けられている。

以上のように、生活期であるデイサービスでのリハビリテーションでは介護を中心としたケアが重要視されるが、機能的な維持や改善といったニーズが求められる場合には、個別の理学療法などセラピストの視点からの分析とアプローチに意義が認められるものと考えるに至った。