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第29回日本ホスピス・在宅ケア研究会全国大会in奈良に参加しました

リハビリ訪問看護ステーションルピナスの島看護部長が、第29回日本ホスピス‣在宅ケア研究会全国大会in奈良において、シンポジストとして参加しました。

 

▼学会チラシ

 

▼セッション概要

【講演と座談会】人生100年時代フレイル予防で健康寿命を延ばそう
~奈良のスペシャリストと語る食と栄養~

 

▼発表抄録

訪問看護ステーションの関わりとして、成功事例を一つご紹介したいと思います。

令和4年10月9日

 

対象者は、2017年発症の難病筋疾患、79歳女性です。慢性呼吸不全により、2020年に気管切開を行い、人工呼吸器管理を行っています。栄養は、胃瘻造設し経管栄養。意識状態は清明で、認知レベルについてもⅡbでほぼクリア、コミュニケーションは絶妙な舌の動きや口の動きで意思の疎通が可能な状態でした。

 

入院中より人工呼吸器からの離脱を目指して、スピーチカニューレで日中を過ごす等、何度かトライしていましたが、十分な酸素飽和度を保つことが困難であり、人工呼吸器が外せない状況でした。元々甘いものが好きであり、一日一回、プリンやゼリーを2,3口摂取することを楽しみにされていましたが、吸引回数が増えることもあり、主治医から在宅での経口摂取の継続は難しいといわれていました。

 

訪問看護は、気管切開、人工呼吸器装着、経管栄養が必要となられた2020年の退院移行期より介入をはじめました。

 

本人の楽しみとなっている”食べたい“という意思を大切にし、在宅でも継続できるよう退院移行期の段階から支援体制を整えました。主な介護者は、息子様一人であり、経口摂取することにより吸引回数が増え、介護負担が増し、本人の楽しみである”食べること“ができなくなる事が予測されました。そのため、訪問介護と連携を図り、介護職が吸引できるよう研修を行い、介護負担の軽減と全身状態悪化予防に努めました。

 

退院移行期の段階から、主治医、地域連携室、病棟スタッフ、リハビリスタッフ、管理栄養士と連携を図るとともに、退院後は在宅医、訪問歯科医、訪問看護、訪問リハビリ(理学療法士・言語聴覚士)、ケアマネジャー、訪問介護、福祉用具、保健師等、多職種での支援を行いました。

 

在宅では、訪問看護、訪問リハビリ、訪問介護を中心に支援を開始し、本人の“食べる”楽しみを諦めずに継続していく為に、訪問歯科診療による口腔内の衛生管理や歯科治療、言語聴覚士(ST)による嚥下評価、嚥下訓練、食形態の検討を行い、本人の嗜好を取り入れながら、一日一回の経口摂取を継続しました。

 

このような支援の結果、現在は、食形態を工夫した少量のカレーやシチュー等も摂取可能な状態となりました。そして何よりも、2020年の退院以降、病状悪化による再入院は一度もなく、肺炎や褥瘡発生もなく、“食べる”楽しみを継続しながら、穏やかに在宅生活を送られています。

 

このように、退院移行期の段階で本人の思いを適切に捉え、アセスメントし、フレイルの多面性(身体的、心理的、社会的)に対して多職種で関わったことにより、安定した全身状態を保ち、“食べる”という楽しみを取り入れながら在宅療養支援を行っていることが、対象者のQOLを維持した在宅生活に繋がっていると考えます。

 

身体的、心理的、社会的なフレイルは可逆的に変化すると言われており、疾患により要介護状態になっても多職種による関わりで、進行を防ぎながら、改善に導いていくことも可能であることを今回の事例をとおして実感いたしました。

 

施設に入所している要介護高齢者の楽しいこと第1位は「食事」であることが調査で明らかとなっています。高齢者にとって「食べること」は、楽しみや生きがいといった観点からも、最も重要であり、今回の事例のように“食”の実現が生きがいにつながり、要介護状態になっても病状進行を防ぎ、穏やかな在宅療養生活につながると考えます。

 

私たち訪問看護師は、医療依存度が高い対象者においても“食”に対する楽しみや生きがいを大切にし、可能性が低い場合であっても最初から諦めるのではなく、適切なアセスメントや多職種連携による可能性を信じ、介護三次予防といわれる進行予防に努め、改善策をしっかりと導くことが重要な役割であると考えています。

 

株式会社 ルピナス
リハビリ訪問看護ステーション ルピナス
訪問看護認定看護師
島 勝紅

 

▼セッションの様子