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第4回日本訪問リハビリテーション協会学術大会in熊本(播磨勇弥)

肺癌により身体機能低下を呈した患者への訪問リハビリテーション介入

株式会社ルピナス リハビリ訪問看護ステーションルピナス 播磨勇弥、 田中仁
大阪保健医療大学 今井公一

【はじめに】
 今回,肺癌により身体機能低下を呈した症例に対して,訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)による理学療法介入(以下PT)を実施したが,不安感の減少や運動意欲の向上に伴い,活動性の増大及びADLの向上効果が得られ,効果の検証を試みたので報告する.なお報告にあたってはヘルシンキ宣言に基づき症例の同意を得ている.

【症例紹介】
 78歳男性.肺癌に対する放射線治療後,身体機能の低下の為ADLに制限をきたし,退院1箇月後より訪問リハによるPTを開始した.key personは妻,2人暮らし.demandはしっかり歩けるようになって外を散歩したい.であった.

【理学療法】
 歩行練習,関節可動域訓練,筋力増強訓練,上肢挙上反復運動,呼吸理学療法,自主訓練指導を実施し,変化に応じて運動量の調整を行った.歩行練習はトイレに行くことや新聞を取りに行くことなど,在宅生活に則した内容を取り入れた.また比較的容易に達成可能なレベルで短期目標を設定し,変化がある毎に再設定を行なった.全介入期間を通して自己効力感への配慮を行なった.

【訪問リハ介入による変化】
 初期評価時は不安や身体機能喪失に関する発言が多い傾向にあり.移動・移乗・セルフケアは介助レベル,FIMは74/126点.歩行は物的介助と妻の軽介助にて自宅内を移動,10m連続歩行では息切れと疲労感を呈していた.6箇月のPT後では,「今日は外で歩く練習をしたいです」「デイにも行って,もっと運動がしたい」など,運動に対する意欲的な発言が増加し不安や身体機能喪失に関する発言は減少した.また移動・移乗・トイレ・食事・整容動作は自立レベルとなり,FIMは99/126点と向上した.歩行は54mの連続歩行が可能となり,見守りがあれば1階の新聞受けや自宅前の公園までの屋外歩行も可能となり行動範囲は拡大した.

【考察】
 在宅の癌患者は,癌の進行を伴い身体的問題に加えて心理的問題を包含していることが多い.本症例においても身体的及び心理的問題が生じていたが,訪問リハによる6箇月間の介入により,心理的問題の解決とともに身体機能の向上が得られた.これはPTの実施に際して,容易に達成可能なレベルでの短期目標設定に配慮したこと,目標達成や変化を認めれば称賛を与え自己効力感向上に配慮したことが主な要因であると考える.また,前提として家族と共に生活し,住み慣れた環境である在宅場面での介入であったことも,心理面にプラスの影響を与えたものと考えている.本症例の経験から,在宅療養に至り,身体的問題及び心理的問題を包含した癌患者に対しては,訪問リハによる在宅場面でのPT,及び心理的側面に配慮したPTの実施が有用であるとの示唆を得た.