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第4回日本訪問リハビリテーション協会学術大会in熊本(中島文音)

訪問リハビリテーションでの低周波治療の効果(ホームエクササイズ指導による1症例検討)

株式会社 ルピナス リハビリ訪問看護ステーションルピナス 中島文音、田中仁
大阪保健医療大学 今井公一

【目的】
 脳卒中ガイドライン2009のリハビリテーション等では、経皮的電気刺激(以下TENS)にて痙縮軽減が勧められている。しかし、TENSの研究は病院、施設等で実施していることが多い。そこで、本研究では訪問リハビリテーションにおいて、TENSにおけるホームエクササイズを実施することで、上肢の随意性の向上、歩行の実用性の向上が得られるかABAB型シングルケースデザインで検討した。

【対象と方法】
 対象は33歳男性、3年前に前頭葉出血にて左片麻痺を呈した症例である。上肢Burunnstrom stage3、下肢3、手指3、基本動作、日常生活動作ともに自立している。A期間(介入期)は、訪問時の運動療法と毎日のTENSを実施し、B期間(未介入期)は、訪問時に運動療法のみを行った。低周波治療器は、伊藤超短波トリオ300を使用し、上肢は手関節背屈筋群、下肢は足関節背屈筋群に設置した。ホームエクササイズを実施しやすいよう上下肢ともに30mmA、100Hzに合わせ、それを、毎日30分間実施するよう指導した。A1期、B1期、A2期、B2期に渡って、20週間を研究期間とした。

【測定】
 上肢は、握力(血圧計を使用)、Modified Ashwaorth scale(以下MAS 1~6段階で表記)、Fugl-Meyer Test(以下FMT)、下肢は歩行速度(5m)、30秒立上りテスト、Times Up and Go Test、Functional Reach Test(以下FRT)を実施した。

【論理的配慮、説明と同意】
 本研究は、対象者、家族にヘルシンキ宣言に基づいた研究の主旨の説明を行い、同意を得て進行した。また、当所属法人の論理委員会で承認された研究である。

【結果および考察】
 今回は、訪問リハビリテーションという限られた環境下において、TENSを用いたホームエクササイズを指導し、それを実施することで、日常生活内での上肢の随意性、歩行の実用性の向上に繋がるかを検討した。
 握力は、A1期5.6±1.5mmHg、B1期7.9±2.3mmHg、A2期6.4±2.2mmHg、B2期7.6±1.9mmHgで介入期に下がり、未介入期に向上したことから、TENSを実施することにより、相反抑制によって、屈筋群の筋緊張が低下し、介入期の握力の数値が低下したと考える。MAS肘関節屈曲は、A1期2.8±0.8、B1期3.4±0.5、A2期3.0±1.0、B2期3.8±0.4で介入期に伸筋群の筋緊張低下がみられた。また、FMTでは、A1期28±2点、B1期30±3点、A2期33±2点、B2期33±2点でありA1期からB2期にかけて徐々に値が向上し、項目の中でも、肩、肘、前腕部の随意性向上した。MAS、FMTともに脊髄レベルにおける上位運動ニューロンの抑制により、前述の結果が得られたと考える。下肢のFRTは、A1期15.4±2.9㎝、B1期15.5±2.8㎝、A2期19.8±3.2㎝、B2期19.0±1.0㎝であり介入期に向上し、未介入期には低下した。それは、TENSによる相反抑制によって下腿三頭筋の筋緊張が低下し、荷重時の重心移動が円滑になった為だと考える。